2025 年 2 月 15 日

容器包装業界は、どのように環境フットプリントを削減できるのでしょうか? 材質科学は革新的なアイデアで溢れています。

最も重要な科学の急成長にはチームワークから生まれたものもあります。食品・飲料用容器包装の分野でも、コラボレーションによる変革が大きな可能性を秘めています。持続可能性、材料開発、食品の安全性など、重要な分野と結びつけることで、容器包装業界は、食品と飲料の安全性を維持したままカーボンフットプリントの削減やリサイクル性の向上に向けて大きく前進してきました。しかし、さらなるイノベーションの余地は大いにあります。 

「テトラパックでは、様々な分野を牽引する科学者や研究者と協力しながら最新技術や新素材を探求しています。こうして私たちは、世界で最も持続可能な
食品用容器包装1を目指して進化し続けることができます」とテトラパックの材料&容器包装の副社長 Joakim Tuvesson は説明します。 

粒状の材料を持つ手

未来のイノベーションのために、過去から学ぶ

科学技術の分野は、この 100 年で飛躍的な進歩を遂げました。使用できる材料のポテンシャルについて、10 年前と比較するとその知見は圧倒的に増えています。これにより、幅広い分野で研究者が活躍できる場が増えています。

「1896 年のオリンピックでの棒高跳びの金メダリスト、Bill Hoyt が、ヒッコリーの木製ポールを使って 3.30 メートルの高さを記録したことを考えてみてください」と、ルンド大学のバイオテクノロジー教授、Rajni Hatti-Kaul は言います。「130 年前の当時は圧巻の記録でした。ですが繊維ガラスやカーボン製のポールを使って 6 メートルの記録を達成する今日のアスリートを見ると、当時の記録は色褪せてしまいます。」

「再生可能材やリサイクル材を容器包装のソリューションに多く使うことができれば、容器包装が持つ環境フットプリントを減らすことができます。」

しかし、材料技術の進歩にはデメリットがつきものです。世界規模で見ると、特に化石燃料由来のプラスチックなど、現代の材料は深刻な環境問題に直面しています。こう言った材料は再生可能ではない資源で、現在世界の温室効果ガス排出量の約 4% に寄与しています。 

植物

新たな材料は一晩では作れない

幸運にもこれが、革新的な材料研究者が別の資源に機会を見出そうとするきっかけになりました。品質の維持や衛生基準は不動の最優先事項ですが、容器包装という観点から、特に重要な特性が 2 つあります。それは、再生可能性とリサイクル性です。再生可能材やリサイクル材を容器包装のソリューションに多く使うことができれば、容器包装が持つ環境フットプリントを減らすことができます。

ですが、食品の安全性を損ねることなくより持続可能な容器包装ソリューションを開発するには、覚悟を決めて取り組む必要があります。なぜなら、新たな材料や技術の開発にかかるリードタイムは、20 年もの時間がかかる場合があるからです。ベルクロを例にとると、研究開発に 10 年の歳月がかかっています

より再生可能な原材料への移行 

容器包装のカーボンフットプリントを最小限に抑えるには、まず構成材料やその調達方法から始めます。また業界は、環境への負荷が少ない化石燃料由来の材料の代替品の開発を推し進めています。

「研究はまだ始まったばかりですが、ひとつ例を挙げるとすれば、植物由来ポリマーには大きな可能性があります。このポリマーは、グリーンケミストリーや微生物の代謝工学を活用して作ることができます。」Hatti-Kaul 教授はこう話します。「これらの手法を使用することで、プラスチックに使用できる構成要素を作ることができ、非常に強力で実行可能な化石由来材料の代替案を提供することができます。」

「新たな材料や技術の開発にかかるリードタイムは、20 年もの時間がかかる場合があります。」

テトラパックはすでにこの分野でリードしています。植物由来ポリマーをキャップや包材コーティングに使用し、従来のアセプティック紙容器に使用されているアルミ箔層の代替として紙ベースのバリアを開発しています。未来はきっと明るい 新たな材料の研究開発は、ポリマー生産や持続可能なリサイクルへの体系的なシフトを推し進めます。 

「新しい生産技術やプロセスを通じて、研究者は必死の思いで化石燃料への依存を減らそうとしています。」Hatti-Kaul 教授はこう付け加えます。「こういった取り組みが、包材が持つ環境への影響を確かに減らしていくのでしょう。」

飲料用紙容器のデジタルモデル

材料専門家とモデルビルダーを結集

容器包装に使用する再生可能材やリサイクル材の割合を増やす取り組みは、複雑なパズルのほんの 1 ピースのようなものです。このパズルでは、食品の安全性への注意深い配慮も考慮される必要があります。そのため、材料の専門家、実験者、モデルビルダーとの協力が必要なのです。このような専門家たちが包括的なモデルを作り、開発した材料が実際のアプリケーションでどのように機能するのかを正確に予測するのです。

研究はまだ始まったばかりですが、植物由来ポリマーには大きな可能性があります。このポリマーは、グリーンケミストリーや微生物の代謝工学を活用して作ることができます

「たとえば、ポリマーが変形する時には何が起こるでしょうか? ポリマーの鎖での変化や相互作用が、材料全体の反応に影響を与えるのです」と、ルンド大学の固体力学教授 Stephen Hall は説明します。「様々な条件下での材料の特性を微細構造レベルで理解することは、信頼できる容器包装ソリューションの開発には不可欠です。というのも、こう言った特性こそが、中にある食品を保護できるかどうかを左右するからです。」 

X 線技術を使った材料分解

耐久性とリサイクル性を両立させるためには、水の浸透と材料の変形の関係性を理解することが欠かせません。 Hall 教授はこれを『材料の特性評価』と呼んでいます。」 このプロセスでは、様々な条件下での材料の特性を調査し、特定のアプリケーションにおけるその材料の持続可能性を評価します。

ここで活躍するのが、X 線トモグラフィーや X 線散乱法高といった高度な実験技術です。主に物体や材料の内部構造を原始レベルから製品規模で形成した写真を可能にするこれらの技術は、ルンド大学の研究機関であるマックス IV の専門家が主要な技術として使用しているものです。

「このプロセスにおける最初のステップは、こう言った X 線技術を用いて紙容器やプラスチックなどの材料構造を原子、分子、微細構造のレベルで測定することです」と、Hall 教授は説明します。「次にその材料を熱、湿度などの環境条件にさらし、いつ、どのように変化、変形、分解するのかを観察します。」

人工知能を使用したデータ分析

世界的に名高い研究機関で得られた知見を支援して活用し、そして実践に移すため、テトラパックはルンド大学との提携を開始しました。 

聴衆に話しかける話者

このパートナーシップの最初のプロジェクトに向けて、研究者たちは X 線分散法から得られたデータ分析のために人工知能を使用しました。この分析からは、負荷条件や材料の変化といった条件下での、木材繊維やポリマーをはじめとする材料の構造や反応に関する貴重なインサイトが得られます。

「X 線技術を使用すると、包材の分子が実際に分解、溶解、変形する様子を観察することができます。」

科学者はこの情報を使用して、材料の回復力を判断します。これは、食品用容器包装の安全性において最も重視すべき特性の一つです。材料の物理特性が正確に分かったら、モデルビルダーはその情報を使用して材料の反応に関するモデルを開発します。これは、容器包装の材料開発に向けた正しい判断をする上で欠かせない工程です。

紙容器のスクリューキャップのクローズアップ

容器包装以上の恩恵を提供する研究

このようなコラボレーションは単なる容器包装業界に変化を起こすだけではなく、さらに幅広い分野への影響力を持っています。再生可能材とリサイクル材だけを使用した材料の開発は、消費財からヘルスケアまで、様々な分野で新たな基準を確立する可能性があります。 

「私たちは、再生可能な資源から調達され、そのライフサイクルの最後にはリサイクルが容易にできる材料を使用したいと思っています。ですが、これは私たちが掲げる包括的な目標の一部にすぎません。」Joakim はこう言います。「持続可能な容器包装を作ることだけでなく、包材のライフサイクル全体を再定義することが課題なのです。」

「再生可能材とリサイクル材だけを使用した材料の開発は、消費財からヘルスケアまで、様々な分野で新たな基準を確立する可能性があります。」

これらの研究で得られた知見が、循環型経済への移行を加速させるかもしれません。こういった進歩は波及効果を生み出します。消費者が求めるものに変化を与え、企業のオペレーションや製品の持続可能性を改善し、最終的には人間の健康と地球の両方にとってベストな方法を規制当局に提示するのです。

「包材科学やその開発にご興味がおありですか? 食品用容器包装の安全性に関する当社の記事について、詳しくはこちら。専門家たちがどのようにして、食品の安全性を損なうことなくより持続可能な容器包装を実現しているのか、ご覧ください。

 

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