2020-08-27
寄稿者: PDC (ルンド) の責任者、Per-Erik Wahlgren
革新は、しばしば逆境の時期にこそ促進されます。 これは歴史から得られる教訓であり、この数か月でその正しさが改めて証明されました。 COVID-19 が全世界に広まったとき、同じく革新も広まりました。最も必要とされた場所で芽を出し、最も厄介な相手にさえ人類はスマートかつ迅速に対応できることを証明してみせたのです。
テトラパックでは、ブランドの未来はブランドの理念の未来に根差していると考えてきました。 1951 年以来、テトラパックは、最先端の技術と、食品加工処理およびパッケージングの統合ソリューションでイノベーションを起こし、大切なものを守るために取り組んできました。 また、コンセプトから成熟した商用製品を生み出すために、完璧を目指してテスト、評価、修正を実行し、お客様を全力で支援しています。
テトラパックでは、お客様と協力して製品テストを通じてこれを実現しています。 基本的には、そのためにお客様に世界で 10 か所に展開するテトラパックのプロダクトディベロップメントセンターのいずれかに来ていただき、私たちと一緒にお客様の希望する製品に最適なソリューションを導入したり開発したりします。 しかし COVID-19 による隔離や封鎖により、そのような進め方は不可能になりました。 この課題を克服するために大きな力となったのが、スウェーデンのルンドに設置されたプロダクトディベロップメントセンター (PDC) です。ここでは、渡航できないお客様を支援するための対策がすでに取られています。センターでは素早く、お客様の拠点のいずれでもライブでストリーミングできるバーチャルな製品開発の試みを広範に提供しました。 これにより、お客様向けのすべての製品試作をバーチャルな次元に移行できました。
バーチャルでの製品試作は、新製品開発 (NPD) を優先的に進める必要があるお客様の間では、すぐに広く受け入れられる選択肢となりました。多くの場合、このようなお客様は、時間的な制限があるうえ、生産ラインに対する圧力や、渡航や安全面での制限から社内での試作ができずにいました。 NPD ではタイミングが成否を左右する重要な要素であるため、バーチャルでの製品試作は、そのような重要な機会を逃さないようにするための鍵となっています。
テトラパックが提供するバーチャル製品試作サービスを利用すると、ビジネス継続性をサポートしますので、食品メーカーは、テトラパックの経験豊富な技術者のサポートを受けながら、新しい加工処理のコンセプトを微調整し、試作と試験生産を実施し、最終結果を評価できます。このような作業すべてをお客様の拠点で行えるのです。
テトラパックのバーチャル製品試作では、従来の対面アプローチに匹敵する品質が得られただけでなく、出張する必要がなくより多くのお客様が各試作品を確認できたため、場合によってはお客様の関与が増加しました。 また、バーチャル製品試作は時間を節約し、炭素排出量を削減することも明らかです。
オンラインにより、テトラパックから製品開発の支援をこれまで以上に容易に受けられます。 テトラパックでは初期のバーチャル製品試作からエクスペリエンスを調整し、現在では「PDC トライアルパッケージ」を提供しています。 対面での環境と同じように、お客様はルンドの PDC でセッションを予約できます。 目的を共有した後は、テトラパックの食品専門技術者とエンジニアが、最適なアプローチが得られるテクノロジーとソリューションを組み合わせたプロトタイプを使用して、お客様がオプションを検証し調査できるよう支援します。
バーチャルな NPD を試行する場合、計画は細部まで決める必要があります。 遅延や問題を最小限に抑えるために、明確に定義された課題についてお客様と事前に合意し、必要なデジタルツール、会議プラットフォーム、音声品質のパラメーターなどの前提条件を要約します。
テトラパックでは、製品の試作ごとに担当のディレクターを割り当てます。担当者は、お客様に優れたバーチャル体験を提供するノウハウを知っているだけでなく、PDC での試作に伴う複雑さも理解しています。何をライブでストリーミングし、後で確認するために何を録画するのか、またカメラを切り替えるタイミングやその他の技術的側面について、ディレクターがリアルタイムで判断し、これにより、実に臨場感のある製品開発エクスペリエンスが得られます。
最良の結果を実現するため、食品技術者も常にオンサイトで関与します。この食品技術者は、専門知識を持ち、お客様が通常抱くような疑問を同様に感じることができます。
新しいカメラシステムの導入により、試作の様子は誰でも複数の角度から確認できます。 一部の機械については、内部の様子も確認できます。 非常に重要な食感を確認する試食や試飲については、試験で実際に得られたサンプルをお客様にお送りします。 リモートでの製品試作は、現在、米国のデントンやブラジルのモンテモルなど、世界中で行われています。 試作にお客様が参加できる場合は、同僚の方もリモートで参加いただけるため、生産性と安全性を維持しながら、誰にとってもインタラクティブなセッションが実現します。
テトラパックは、お客様との絶え間ない対話に基づいて、バーチャルなエクスペリエンスを継続して強化しています。 たとえば、現在では試験中に結果が画面に表示されるようになりました。また、プロセス全体を通じて継続的なフィードバックを促進するために小さな調整をいくつか加えました。 これにより、試験をしながら試作品を改善できます。 テトラパックの目的は、お客様が最終レポートを受け取りその結果に満足していただき、生産の次のステップに進む準備を整えることです。
革新は必ずしも急進的である必要はありません。少しだけ付け足したり、変化を加えたりするだけで良い場合もあります。 いずれの場合も、テトラパックは、お客様と最終消費者のどちらもが、ヨーグルト製造のより効率的なプロセス、新しいアイスクリームフレーバーの微調整、昆虫のタンパク質で強化された栄養飲料の開発 (これは実際にあったケースです) などを通して、新たな食のエクスペリエンスを体験できるよう支援します。
テトラパックの新しいバーチャルなアプローチは、すでにお客様のパラメーターを調整するうえで活躍しています。これにより、お客様の製品の品質保持期間が 2 倍になったほか、間接加熱システムと直接加熱システムでバニラカスタードの生産を比較できるようになりました。 テトラパックの最先端機器で加工処理を試行する能力は、お客様が、より高品質な製品を生産し、情報に基づいて新しい技術への投資を判断するうえで役立っています。
世界各国に 10 か所設置されたテトラパック PDC には、将来スーパーマーケットの棚に並ぶであろう食品や飲料についての優れた見識があります。 テトラパックでは、牛乳や植物ベースの飲料からフムスやプロセスチーズまで、あらゆるものをテストし試作品を製作し、常にお客様が限界を打破し時代を先取りできるよう支援しています。
過去 1 年間に PDC で試行された試験の約 50% が植物ベースの製品に関するものでした。このことから、植物由来の発酵食品の人気が急上昇していることがわかります。 その他の 30% は、栄養強化製品の開発を重要視したものでした。 免疫力を高める飲料など栄養上のメリットを追加した製品のテストは、テトラパックのバーチャルな製品試作の中で、引き続きお客様が掲げる主要な優先事項になっています。
栄養上のメリットが追加された食品や飲料に投資する利点は、製薬業界では治験からリリースまで 10 年かかるのに対し、食品業界ではわずか 6 か月でリリースできる点です。 革新のスピードと高齢化社会の需要により、このようなタイプの製品は栄養療法においてますます重要な役割を果たすことになるでしょう。
バーチャルな製品開発の試みは、その有益性が証明されており、10% から 100% へと拡大しています。 テトラパックでは、バーチャルな製品試作は今後も継続され、将来的には従来の対面形式での作業の一部がバーチャルに置き換わるものと予測しています。 これにより、お客様には 2 種類の異なる補完的な体験を効果的に提供できるようになります。
このような取り組みのすべてにおいて、テトラパックには、特に原材料の注文と輸送の面でさらなる柔軟性が求められます。ただし、これまでバーチャルプロセスを体験したお客様からは、オンサイトと同様の体験が得られたという感想をいただいています。 そのようなお客様の興味はすでに、テストアプローチの仮想化をさらに進めることで、将来的に革新を加速できるのかということに向いています。
COVID-19 の発生により、新製品開発に対する従来のアプローチは通用しなくなりました。 お客様に対する使命感から、テトラパックはその革新的な考え方を新しい働き方の推進に応用しました。 逆境に直面している現在の状況下で、テトラパックでは次世代の食品飲料製品の開発をサポートする方法を大幅に再構成しました。
PDC でのサービスの提供方法を変革することで、パンデミック下でも新製品の開発を安全に実施できるようにしただけでなく、イノベーション全体の円滑性、柔軟性、頻度を高めたほか、持続可能性も高めました。
テトラパックでは、このような創造性と革新性を持ち続け、お客様と協力して新製品開発の可能性を最大限に引き出すことに取り組んでいきます。