近年、チルド液体食品の世界市場は常に流動的です。しかし、この変化はチャンスをもたらすと同時に、消費者が通常より伝統的な商品タイプに何を求めているのかをより明確にする機会でもあります。さらに、各チルドの分野は消費者のさまざまなトレンドに対応しており、それはメーカーにとっての課題であると同時に、成長のチャンスでもあります。このような変化の背景には何があるのか、また、チルド液体食品のメーカーが注目すべき今後のトレンドや展開について、専門家が考察します。
歴史的に、チルド液体食品といえば、いくつかの標準的で一般的なものを思い浮かべることでしょう。すなわち、牛乳、ヨーグルトなどの乳製品、フルーツジュースなどです。20 世紀初頭に冷蔵ボトルが商業的に導入されると、こうした製品は欧米では家庭の定番となり、特に朝食の食卓に並ぶようになりました。いくつもの世代が、牛乳や乳製品に代表されるチルド製品で育ち、そのような習慣は文化的な試金石となりました。アメリカでの広告キャンペーンで使用されたフレーズ「Got Milk?」 は非常に有名です。
また、チルド製品、特に牛乳は、ここ数十年にわたり市場の成長を牽引したさらなる強みを満喫しました。消費者は、多くの場合、チルド製品の方が「より新鮮」であり、より健康的で、より自然であると認識します。テトラパックのビジネス・インサイト部門のリーダーである Anna Larsson は、次のように述べています。「特にヨーロッパでは、この考え方は、消費者がチルド製品はより高品質であると考える原動力となっていました。
もちろん、こうした品質(健全で、栄養価が高く、おいしい)は、もはやチルド製品に限ったことではありません。常温製品は、冷蔵製品と見分けがつかないことも少なくありません。また、チルドのカテゴリーも非常に幅広くなり、コールドブリューの紅茶やコーヒー、エナジードリンク、植物由来飲料、ソース、卵を使った製品、スープなども含まれるようになりました。そのため、メーカーはチルド液体食品のラインアップに関して、革新と差別化の幅を広げられると同時に、競争の激しいこの分野において、増え続ける消費者の期待に確実に応えていかなければなりません。
コロナウィルス、インフレ、家族揃っての朝食の減少などは、チルド製品の購入に関して消費者の行動に影響を与えた要因のほんの一部に過ぎません。全体として市場はやや横ばいです。これは 2026 年まで続くと予測されています。しかし、この停滞のように見える背景には、特定の世界市場と特定のチルド食品の分野とで起きていることについて微妙な差異を示唆する全体像が透けて見えます。
テトラパックのグローバル・カテゴリー部門のエキスパート、Nagi Noujeim は、次のようにコメントしています。「それぞれのカテゴリーを地理的な背景から検討する必要があるでしょう。」 「乳製品、特に牛乳は、欧米市場、特にアメリカ、イギリス、ヨーロッパでは成熟した分野となっています。一方、中国では、チルド牛乳は現在、特に大都市で成長しており、消費者はチルド牛乳が提供する 『新鮮』 な感覚にますます惹かれています。さらに、コーヒーやその他のカテゴリーのチルド業態も成長しています。ですから、横ばいに見えるような市場でも、深く調べることで、チルドの分野に潜む成長のチャンスを見極めることができます。」
Noujeim によると、現在さまざまなトレンドが、チルド液体食品、特に牛乳とジュースの需要に影響を及ぼしています。「消費者の自然志向や透明性への欲求など、良い影響を与えるトレンドもあれば、朝食機会の減少や消費者の食生活の変化など、難しいトレンドもあります。したがって、業界各社がこうした前向きなトレンドを活用して、チルド液体食品の消費を増やすとともに、機能性健康食品や持ち運び可能なチルド製品の提供など、新たなトレンドを模索していくことが重要です。」
では、チルド食品市場に影響を与える可能性のある主要なトレンドは何でしょうか? 上述したように、「新鮮さ」、ひいては「品質」に対する認識は、多くの市場において依然として強い影響力を持っています。「健康指向の理由から、食品加工処理を最小限に抑えた製品が好まれる傾向にあり、これがチルド製品カテゴリーの強力な原動力となることは間違いありません。」と、 Larsson は述べています。
また、チルド製品は添加物や保存料が少ないと思われており(これは必ずしも正しいとは限りませんが)、チルド製品が「ナチュラル」であるという認識をさらに後押ししています。そしてこれは、プレミアムな製品への需要が高まっている背景も相まって、製品のプレミアム性にも活用できます。
チルド液体食品は冷蔵されるため、腸の健康、免疫、その他さまざまな分野でユニークな機能的メリットをもたらす成分を安全に含有できます。そしてこれは、もう一つの大きなトレンド、栄養面での利点を付加した機能性食品と結びついています。「消費者は特定の機能性を持つ食品を求め、健康に積極的な役割を果たしてくれる成分を求めています。」 「エネルギーや健康のためだったり、心を落ち着かせてくれるものだったりします。
ヨーグルトやその他の乳製品に生きた細菌を増やすことは、機能性を求めるトレンドの高まりを表わす一例であり、食物繊維を加え、乳糖を除去して消化を促進することもその一つです。プロテイン強化製品は、フィットネス愛好家から栄養補給を求める高齢者までの消費者層をターゲットに、数年前から成長しており、今後も成長し続けるでしょう。機能的健康に関連するその他の興味深い新興分野としては、免疫力向上やメンタルヘルスが挙げられます。
現代のライフスタイルは、一般的に、より速く、より規則正しく、そして実に多様な活動で占められており、従来の消費パターン、特に食事の時間帯が変化しています。そのため、多くの消費者は朝食やその他の食事の一部、あるいはすべてを外出先で済ませるようになりました。
コーヒーや紅茶をベースにした飲料、フレーバーミルク、米、ナッツ、穀物、種子をベースにした飲料などのカテゴリーが現在成長している背景には、機能性健康食品と並んで、このような変化があります。メーカーは、仕事中や体を動かした後に、ヘルシーで元気の出る流動食スナックを食べたいという需要にも注目する必要があるでしょう。
また、最近の消費者習慣の変化の中には、植物由来の製品が個人の健康にも地球にも有益であるという認識から、より多くの植物由来の製品を消費しようとする傾向も見られます。もちろん、このカテゴリーは、より広範な乳製品市場と比較すると、やや限定的ではありますが、チルドの植物由来飲料やコーヒーベースの飲料など、新しいチルド製品を提供する機会をメーカーにもたらしています。これはまた、メーカーが新しいフレーバー、機能性の追加、健康上のメリットの改善などを提供することで、製造するチルド牛乳やジュースのポートフォリオを多様化し、チルドカテゴリーに新しい消費者を引き付けるのを後押しする可能性もあります。
これについて、Larsson は次のように述べています。「どのような製造でもそうですが、ただ 2 つのものを組み合わせるだけではうまくいきません。」 「植物由来飲料は、比較的新しいカテゴリーのため、魅力的な味や口当たりを実現するためには、多くの実験を行う必要があります。よって、エンドウ豆やオート麦などの混合タンパク質も多く混合されており、革新するには良い分野です。そして、チルド製品の位置付けと、それが消費者にもたらす利点について、明確で熟考したアイデアを持っている必要があります。」
結局のところ、チルド液体食品のビジネスチャンスをつかむには、それぞれの地域市場やカテゴリーにおける消費者トレンドを理解し、それに合わせて製品を位置づけることが成功の鍵となります、と Noujeim は述べています。「特定のセグメントを探し、刻々と変化する消費者の需要をとらえる独自の販売提案を提供する必要があります。そのため、消費者の心や食生活の中で適切な存在であり続けるためには、提供する商品を進化させ、開発することが極めて重要です。」
もちろん、細分化は常に重要ですが、チルド液体食品が定番商品として定着している市場を考慮すると、共鳴するイノベーションを見つけることが不可欠です。これこそ、調査、実験、既存および新規の消費者層への訴求が将来の成長を実現するところだからです。