食品、乳製品、飲料の各メーカーが、利益率の高いオーツ麦飲料への事業拡大を試みる際には、回避すべき多くの落とし穴があります。 「この分野には学ぶべきことがたくさんあります」と、テトラパックの植物由来製品のテクニカルラインソリューションマネージャー、Ola Fukquistは言います。 「テトラパックは20年を超えるオーツ麦への取り組みを通じて、お客様にとって有益な分析情報と知識を培っています」
オーツ麦飲料は、食品科学者のRickard Östeが1990年代半ばにスウェーデンのルンド大学で挽いたオーツ麦から飲料を製造した当時から、大きく発展しています。 乳糖不耐症向けの代替乳を提供するために当初開発されたオーツ麦由来の飲料は、現在、大きなブームを迎えています。世界規模でみると、この市場は2026年までに68億米ドルに達し、平均年間成長率は13.4 %になると見込まれています。
オーツ麦を可能性のある製品と見ている人には、検討すべき多くの問題があります。 まず、原材料(穀粒、粉、配合物)を選ぶ必要があります。 「この3つすべてを使ってオート麦のベースを作ることもできます。ですが、プロセスは選択するものによって異なります。基本的には、他の人が用意したオート麦をベースに、カルシウム、塩、植物油を加え、包装するだけです。」 「単純なプロセスなので短期間で市場に出すことができますが、ベースがどのように製造されたかを詳細に知ることはないので、最終製品の微調整という点では柔軟性がかなり限られます」と、Funkquistは説明します。 「また、長期稼働の場合、コストも高くなります」
穀粒または粉で始めると、プロセス全体を管理でき、プロセスのすべての設定を調整して異なる生産物を製造することができます。 「穀物の場合は湿式粉砕機、小麦粉の場合はミキサーが必要ですが、それを除けば、工程は非常に似ています」。さらに、工場からパッケージまで、ブランドとしてのストーリーを語ることができ、マーケティングに役立つと彼は指摘しています。
原材料が決まっても、オーツ麦ラインの購入時に考慮すべき点がさらに多数あります。 乾燥状態の原材料を湿式システムに適切に移しかえるシステムを見つけることは、難しい場合があります。 「粉は非常に脂肪分が多いので、移し替えるのが難しい時があります」と、Funkquistは言います。 また、連続加工を長時間実行できるラインを見つけられたら有利です。こういうラインがあれば、効率と信頼性が上がります。 「継続的に実行できる一貫性のある品質も必要です。それが揃えば、最もコスト効率の良い方法で製造に入れます」
目標の製品機能を達成するために必要な材料、そしてその処理方法も理解する必要があります。 しかし、オーツ麦の食品加工処理システムで本当の鍵となるのは、重要な3つの段階(懸濁液の準備、懸濁液の加水分解、そして分離段階における繊維質の除去)の相互作用を理解することです。 「これら3つのバランスを取り、相互にどう依存しているのかを理解する必要があります」と、Funkquistは言います。 「それに基づいてシステムを最適化し、良質の飲料を製造します」
分離に関して言えば、デキャンター内で設定を調整すると異なる製品品質を得られます。期待通りの成果を達成するには「確かな知識」が必要です。 「繰り返しになりますが、それはバランスです」と、Funkquistは述べます。 「タンパク質と繊維を減らすのではなく、タンパク質と繊維を飲料にどれだけ投入するのかによって、 口当たり、味、製造量も変わります」
では、メーカーが自覚しておくべき一般的な落とし穴とはどういうものでしょうか。 1つは、必要以上の利潤を求めて無理をすることです。 「利益を増やしたいのは当然です。そして、それを実現するために浮遊固形物を飲料に追加するという対応があります。 しかし、そうすると味やその他の機能性に影響が出てしまいます」
もう1つの落とし穴は、加水分解と酵素の処理に関係するものです。 「メーカーは複雑な加水分解が必要だと考えることがありますが、シンプルにしても同じ品質を確保できます」と、Funkquistは説明します。 「そうすることで、初期投資と運用コストの両方を削減することができます。」加水分解のやり過ぎには微生物的な側面もあり、深刻な問題に行き着くのは容易に想像できます。
蒸留システムで熱処理ユニットを最適化し、必要な製品品質を達成することは、操業コストを抑える上で重要です。 「バランスを取って行動することです」と、Funkquistは言います。 また、さまざまな熱処理ソリューションがあり、それぞれ独自のプラス面とマイナス面があります。 「間接システムでは蒸気をあまり使用しないのですが、品質に少々影響が出るでしょう。 一方、瞬間冷却機能のある直接システムの場合、高品質を得られますが、蒸気の消費量が高くなるでしょう」
洗浄も、特に旧式のシステムの場合は簡単ではないかもしれません。 「牛乳を洗浄する場合とは異なり、かなり大変です」と、Funkquistは述べます。 「適切な洗浄を行うためには、その製品や残留物を完全に理解する必要があります。テトラパックでは、洗浄性を確保する特別な洗浄プログラムを開発しました。これはテトラパックにしかないテクノロジーです。」この一例として、過去12ヵ月間に実施された熱処理装置の新しい洗浄方法を挙げてくれました。
もちろん研究開発は続いています。Funkquistは、テトラパックは「オーツ麦に関して言えば、かなり成熟しています」と特筆していますが、テトラパックはお客様により良いサービスを提供するために知識を深めることを約束しています。 たとえば、現在は、特定の酵素を非活性化するために必要な熱負荷の程度に関する調査に注力し、デキャンターで実験とテストを続けています。 そして、Funkquistが「高タンパク質ですが、味が課題です」という亜麻仁、麻、ソラマメのような別の植物由来の原材料とオーツ麦との配合も行っています。
結局、オーツ麦への転換を検討している食品メーカーは自社の戦略を定める必要があります。たとえば、イノベーションを重視したプレミアムメーカーになることを目指すのか、省エネや無駄の削減など基本を重視したコストの最適化を目指すのかを決定する必要があります。 また、植物由来の製品、あるいは乳製品も製造できる柔軟性が必要なのか、 製造ラインの制御システムは原材料の消費、製法、トレーサビリティにどの程度対応できるものが必要なのかを考慮する必要があります。
そして、これらすべての答えを得るには、特にオーツ麦について文書化された長年の経験を持ち、製造を確実に成功させるための専門知識と裏付けのあるサプライヤーが必要です。 「テトラパックはすでに数十年の経験を有しているので、お客様の目標が何であれ、その達成を支援できます」と、Funkquistは述べています。